新月の家/草野大悟
ぼくの隣でいつも輝いていた。
太陽はいつだって笑っていた。
雨の日も風の日も雪の日だって。
ガス管をくわえたあの日だって。
太陽は白く笑っていた。
太陽はいつだって輝いていた。
ぽかぽかの光を放っていた。
みんなの心の蒼いアルコールを燃やしてくれた。
どんなに強い嵐が吹き荒れても。
悪魔が横に座っていたって。
あの日太陽は新月になった。
なりたくもないものに。
望みもしないのに。
突然新月。
悪魔が手招きしていた。
新月は太陽であった日を忘れ。
漆黒のタールの中でもがきながら家を建てる。
輝きが闇という名の光を放つ。
新月。
新月の家。
新月の家。
黒い光がぽかぽかに変わる。
宙に漂う笑顔達が還ってくる。
家。
新月の家。
ね。
戻る 編 削 Point(4)