犬歯/佐々木妖精
 
邦楽なんか
と箒をかき鳴らし
セックス・ピストルズを崇拝していたクラスメイトが
品出しをしている店で
立ち読みだけして帰る
あんなに笑い合ったのに
ロクに目も合わせない

書き置きを残して飛び出した従兄は
処方箋を抱えて舞い戻り
イタリア料理専門店を経営し
方言を勉強して
今は蕎麦と焼酎まで振舞っている

セーラームーンごっこをねだった従妹も
首都圏で同棲生活
タキシード仮面役だけは
絶対にやらせてもらえなかったのは
そういうわけだったのだろう



三軒の総人口に挨拶をする
みな還暦まで
冬を耕して生き抜いてきたから
携帯電話やブロードバンドは
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