重力井戸の中の蛙/影山影司
 
 十五の時に知ったんだ。
 月の中身は空っぽだとさ。
 アポロ壱惨号が月に激突した瞬間、月はぐわんぐわんと揺れたという。

 十八の時の彼女が「泣ける。泣ける。マジ泣ける」と聞いていたJ-popは
 どれもこれも愛を唄って あれもそれもHAPPYかLUCKYに満ちていた。
 僕の心は満たされない。

 十九の時に知ったんだよ。
 僕の心にゃ愛がない。
 誰彼掴まえて「オマエには愛がない」と説法して廻ったのは
 詰まる所自らが空虚だったから。

 僕の脳天にアポロ壱惨号が着陸した瞬間である。
 唇がカラカラに干涸らび始めた。

 自らのくだらなさに嫌気がさした僕は

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