20080207/藤野鞠子
何かを急に言いたくなって 口を開けたとたん
くもりぞらにのみこまれてしまった
たとえば好きな音楽を
反芻してやり過ごす
でも最後が訪れるまで
待ちきれないんだ
盛り上がりがこないから
もどかしくて
かなしみに頭までつかって
きもちよかったのかな
そういえば髪がずっと
湿ってた
風が吹かなかったんだ
自分ひとりしかいないみたいな背中
見せびらかして歩いてた
坂道には光が降り注いで
豪華な家やマンションの窓をきらきらさせてた
レースのカーテンと丸い傘の照明
私は
イヤホンの曲を1分ごとに変えた
光がまぶしいのに
あたたかくはなかった
人が通り
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)