プラネタリウムの夜/ましろ
肩と腰を抱えられながら
ただ 歩く
着いたよ。あれだよあれ。
プラネタリウムに倒れ込んだ私は
そのあまりの小ささに
悲劇的にベンチに突っ伏した
ロビーは静寂に包まれていた
ふたりきり
ごめんね。迷うなんて。
でも、最後の上映には間に合ったから。
彼は 無言の私の
凍えた肩 背中 手をさすった
靴と靴下を脱がされて私は目を開けた
素手で 濡れて固まった両足を包み
息を吹きかけては擦り温める
汚い足の指一本一本
最後の上映開始ブザーが響いた
それから私たちは
隣の席に座って
一組の子連れ家族 サラリーマン風のおじさん一人 女性二人と
小さな白い天体を見上げた
音楽が流れ闇が訪れると
映写機からいろいろな星が燦めいて
伝説とともに眠っていった
この時だったと思う
この人と結婚しよう
私の奥深く芯のところで一つ固めたのは
今ではときどき
山まで星をみにいく
雲が少ない夜は
名もない星が燦めいて流れていく
体が冷えはじめると
炒れてきた熱いお茶を
わたしは差し出す
戻る 編 削 Point(8)