過呼吸/水町綜助
 
町はやはり動いて


流れて
流れて
この固い冬もいつかわすれて
また息をする
そのときある風景を吸い込んで

流れ消えてゆく落ちた葉の
葉脈は細緻で
伸びていった先よりも
うつくしかった脈拍をたどる

とても暑かった日
浮かび上がった血のみちすじから
きっ、と昇り立つ
生きているにおい
それを嗅いでやはり瞳もすこし熱を持つ

過ぎていって
消えてはいない
過ぎていって
かたちを無くす
いとしいと
言ってしまってすぐに
疑わしさを嗅ごうとするほど
気弱だから
いま過ぎてゆく
その瞬間だけ
かたく手のひらを閉じるよう
見つめつづける
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