午後/大覚アキラ
 

ほどけて溶けるように降り注ぐ
午後の木漏れ日の下で
ジョニーとスーザンは

最近発見された
水星の表面にいくつも刻まれた放射状の巨大な溝のことや

あの頃のおれたちって
突っ走ってるっていうか そんな感じだったよね とか

昨日の夜のお互いのパートナーとのセックスが
いかに退屈だったか とか

そういうとりとめもないことについて
ひそひそと声を潜めて話し続けていた

スーザンの左の頬に落ちる木漏れ日の影が
鱗のような模様を描き
彼女はまるで人間の形をした爬虫類のようだ
とジョニーは内心思っていた

しばらくすると
巨大なタンクローリーが
すぐそばの幹線道路を何台も何台も
絶え間なく轟音を上げて走り去っていき
お互いの言葉は相手の耳に一切届かなくなった

それでも二人はひそひそと声を潜めたまま話し続けていた
相手の言葉など聞こうともせず
自分が語りたいことだけを
ただ独り言のようにつぶやき続けていた

そんなふうにして
美しい木漏れ日の下で
午後はゆっくりと溶けていった
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