ノート(鏡矢)/木立 悟
 


見え隠れする明るい夜が
一羽一羽に分かれ飛び去る
壊れた家から波を見ていた
傾いだ家から曇を見ていた



鏡の道に葉は落ちて
緑の上に銀はひろがる
小さくざわめく音は集まり
野は浅瀬のように静まりかえる



歩みはじめたものの前で
曇は曇を 野は野を巡る
崩れた家から崖へとつづく
夜のまぶしさと悲しさの道



生まれては還るはばたきたち
静けさをつくる小さな音たち
しっとりとした黒の手のひら
夜を引き寄せ 夜を放つ




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