人生のうちで一番笑う日/________
そこでは春だった
おじいさんが歌を歌いながら羊と歩いていて
その羊は、歌を歌えないことが悲しいと言った
夢で気づいたんだ
羊は右の前足で何度かわざと小さな虫を踏んだ
そのあとすりつぶした
彼には自分よりも弱いものの存在を確認する必要があったのか
それとも自分が世界中で一番弱い存在になろうとしたんだ
君は、夢には現れなかった
だって、そりゃそうだ
君は、夢の外で僕のこと抱いててくれたから
目が覚めたとき泣いていた
涙は君の胸元に広がって
冷たくさせた
「あした、人生のうちで一番笑う日にしようね」
僕たちは近くで見た月がほんとうは汚いことを知らない
僕たちは自分たちが愚かなことを知っている
僕たちはお互いを食べあって生きている
いつかあっけなく簡単に、死ぬ
悲しむ暇はないはずなのに
ただの冷たい水にすら
笑っている君にすら
憂いてしまうくだらない癖
愛
なんて
理解できないまま
君が「幸せ」と言う日常が
あっけなく簡単に崩れる日を恐れて
そんな暇はないはずなのに
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