Moonchild/ホロウ・シカエルボク
痴呆の少女が呆然とうろついている裏通り、停止中の工事現場の敷地内を通ってきた汚れた靴底が地面に残す赤土の臭いを、確かな老人が嗅ぎながら後姿を窺う夜中
月はクレセント、クレッシェンドが強すぎる風に時折雨雲を吹き付けられて、憤懣やる形無しと言った眼つきを瞬間で隠す―穏やかな心からでしか、穏やかなイエローは生まれないものなのだ
僕はコカコーラを飲みすぎて眠れなくなっていたんだ、それらが徘徊する一部始終を見ていた、老人が毒を持った優しさで少女の腰に手を回すのを、それから路地裏で行われたいびつな感動の交換を、僕は傍観者だった、誰を殴ればいいのか判らなかった…大きな音を立ててげっぷをしないように、
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