林檎落下/エチカ
赤いビロードが 私を狂わせようとする
耳たぶの裏がじん、と赤い
今夜あなたを思って濡れる 私の瞳
不気味な声で鳴いた深い孤独の魂よ
最後の審判を知らずにもがいている深い悲しみよ
君はまだ
知らないでいる
反芻するアスファルトの憐憫
速度を落として泣いた夜
獣達はいつも 牙を持たないで
心を濡らして 泣いている
今夜君は知るかもしれない
今夜君は黙するかもしれない
それがどんなに私の心を奪ってしまうかも知らないで
私は待つだろう
意味の無い花腐しの 鈍色(にびいろ)の朝を待つだろう
君を恐れて
今夜 林檎は落下する
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