走るひと/恋月 ぴの
 
直していた

同じ時刻の同じ道
それなのに毎朝違う風景と出会える
季節は日々僅かながらも表情を変えてゆき
そして、その変化に励まされながら私は走り続けた

ゴールがあるから人は走れる

そんなことを考えたことがある
走りきった先に栄光のゴールテープと
地鳴りの様に湧き上がる歓声が待っていれば尚のこと
たとえ誰ひとり待っていなくても、ゴールがあれば直走れる

とにかく頑張らないとね

スターター台の上で係りの人がピストルを構えると
不思議と迷いなんて無くなっている私がいて

気がつけば鳴り響く号砲とともに
42.195キロの向う側で私を待つ未知の世界に向って
はじめの一歩を踏み出していた

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