走るひと/恋月 ぴの
どうしよう、スタートまであと何分も無いよ
周りを見渡せば皆速そうな人ばかりだし
私がここにいるのって何だか場違いに思えてきた
友だちに誘われはじめてはみたけれど
誘った張本人はとっくの昔にやめてしまい
「今日はめちゃ頑張ってね」
両手で私に合図を送ると彼のクルマに乗り込んだ
トイレに行っておけば良かったかな
健康的に痩せられるから
そんな動機だったような気がする
靴底から伝わるアスファルトは思いのほか硬くて
足首とか膝が痛くなり眠れないときもあった
友だちがやめたとき、私もやめようかと思った
それでも朝目覚めるとシューズに足を入れ
シューレースを結び直し
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