自動扉/千波 一也
 
思い出すことができるから。
 それがわたしたちにある、大切な場所だから
 小さくて小さすぎて、図らずも、失いかけて
 急いでしまうけれど。みんな、みんな、



 」

ときどき
ひとのこころの行き先が終われずにいる

機械、という言葉そのものが
直らない日の
片隅で



自動扉のその先に
いくつのわたしが消えるだろうか

向かう場所などなんにも知らず
使い古すこと、さえ
失いかけて



それなりの
昔と未来とがあるわたしに
閉じられたまま扉は開く

やさしく、
自動に

聡明に、







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