自動扉/千波 一也
 
それなりの
背丈と重みとがあるわたしに
自動扉は開いてゆく

容易に
開いてくれることが
当然でなければならない、と
わたしもすっかり
慣れてしまって

背後で閉じられる
自動扉の気配のことは
それとなく聞いている

みんな同じはずだから
ひとつの音、として溢れかえらせて
わたしはすっかり
慣れている



「声にはしないことが自然と増えて、それでも
 傷つくことを互いに幾つも数えてきたから、
 素知らぬふりで、あたたかく共有し合えて、
 伝わるものは必ずあるよね。そういうことを
 信じていてもいいはずだよね。流されても、
 忘れられても、思い
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