遠ざかれ/九谷夏紀
 
君が手に引かれるままに
ここに来るまでのことを覚えていない
余所見ばかりして 少し眠っていたのは
良い道だと称えられていたから
手が離れてしまうことなんて恐ろしすぎて
そうやって守っているものの価値を立ち止まって考え始めたら
手が離れてしまった

歩きやすいに越したことはない
広く まっすぐな道
舗装されることを望んだのは 君と 我もだ
何もわからなくても
鵜呑みにした基準で
正しいのだからと
尊ぶべきものを尊んだのだからと
上手くいくのだと
思ってしまっただけのことだ お互いに
軽んじることなく
だから新しい家族をと
道はひとつだったから
眠らせたものは眠
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