紫鬼のお面/北大路京介
紫の面が飾られる"
生徒全員が確信した
二郎くんもそう思っていた
しかし、二郎くんの作品は駅に飾られなかった
二郎くんは、どうして自分の作品が選ばれなかったのか担任の先生に尋ねた
すると先生は 答えた
「 だって、紫の鬼なんて いないでしょ 」
二郎くんは悔やんだ
赤や青にしておけば良かったと
二郎くんは泣かなかったが、二郎くんの母は泣いた
「 二郎のお面が一番じょうずだった
あの先生はおかしい
学校に抗議したいけれど、抗議したら、二郎が先生に いじめられちゃう
わかってね、二郎 わかってね 」
母は二郎くんのぶんも涙を流した
2月になると 二郎くんは毎年 思い出す
紫色の鬼が発見されるのは、それから60年もあとのことである
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