「 裂け眼。 」/PULL.
、紙に、書かれ燃え
ることばの幽かな溜息とおなじ、色。道端で
朽ち果て土に還るひとがたの、風に、撫でら
れ削られる囁きは。渇いた地面に耳を当て、
息を止め、聴こえてくる、わたし、の中を流
れるのとおなじ、色。
等価交換所に近くなると、革袋の中の砂が
いっせいに、ぎぃいぎぃい!とひどく啼く、
蠢く革袋を抑え付け、交換所に入る。交換所
の主人は体中の関節が銹びた、色を鳴らすの
っぽで、特に利き手の薬指がかすれ、銹びた、
色を鳴らす。机に革袋を置く、主人は、節く
れ立った薬指で引っ掛け、秤に、載せる。銹
びた、色が、ゆっくりと数を数え、その色の
数だけの、土と、海の
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