高校生/草野春心
君を見ていた
寒い冬のこと
白い白い雪の午後
運動場の倉庫にもたれ
二人は並んで立っていた
ブラスバンドの音がした
バーバリーのマフラー
手袋の握りこぶし
うつむく横顔
吐き出した白い息は
唐突な僕の言葉
曖昧な季節が消える
君の柔らかな部屋のなかで
いっぴきの蛍が死んでゆくのを
僕は見た
何をすべきだったんだろう
僕に何が出来たんだろう
君は誰だったの?
心にできた一つの空席
次の言葉を見つけて忘れた
次の言葉を見つけて忘れた
君を見ていた
信じられなくて
君を見ていた
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