創書日和「靴」 靴はいつでも痛んでしまう/大村 浩一
いつでも急いで履くし
履きかけで何歩も歩いてしまうので
かかとから靴はいつでも痛んでしまう
妻も老いた母からも
もっと大事に履けとか
みっともないから止めろと言われるが
そういうことに構うのが嫌で
靴はいつでも痛んでしまう
靴べらを持ち歩けと
何度も買わされ持たされたが
その度にすぐなくすので
靴はいつでも痛んでしまう
そんなに雑にするならもう靴は買わない
とまで妻に言われたが
それでも結局かかとを踏んで
靴はいつでも痛んでしまう
そういうことに構うのが嫌で
背広で床に座って朗読を聞く
会場に着くのはいつも遅くて
椅子席は大抵塞がっていて
でも疲れる
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