愛なき殺戮/atsuchan69
愛。それは多分に、
漠然とした表象の言葉で
ありのままの語彙ではない
――と誰かが云い
するとたちまち花は萎れた
漆黒の森に谺する
狼の吼える声におびえ
かよわき詩人らは外界を忌み
ひどく痩せた自尊心を
互いに触れて
たえず傷つけあっては
その一生を、
蒼い洞窟にこもって暮らした
ありのままではない、
森を見下ろす満月をあとにし
この僕は狼に食われて
既に死んだと噂されていたが
憎悪とともに住まう魔女の家で
しかしパーティーはまだ始まらなかった
木綿のキッチングローブを嵌めて
僕は特大のケーキを焼いた
ストーブの燃える台所には、
干乾
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