アルカリ電池/夢幻
 
夜の街を自転車で疾走する。

有り余った体力と
塞き余った気持を抱えて
私はひたすら疾走する。

消えかかった住宅街の街頭も、
パチンコ店のケバいネオンも、
コンビニの普遍的な明かりも、

ぜんぶ、ぜんぶ。

視界の端を細く掠めていくだけで
私に絡みつくのは
肩まで伸びた髪の毛だけで。

私は
成り余った私自身と
売り余った矛盾を背負って

どこまでも、どこまでも。

まるでアルカリの海を進むみたいに、
自分の身体が夜に溶けていくのを感じながら。

文句を言って、嫌味を言われて、
冗談を言って、悪口を言われて、
誰かと笑って、ひとりで泣いて、


それで時々感謝する。


夜の街から自転車で失踪する。
思い余った行動と
言葉に余る快感を追い風にして、
私はひたすら失踪する。
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