土砂降りの夜/風音
 
その少女は
「触る手」が大嫌いでした。

いつもいつも逃げ続け
大人になっても
怯えていました。

ある日
とても信頼しているひとが言いました。
「キミが自分を傷つけても
 もしも死んでも
 ボクの知ったことじゃない」

同じ日
別の愛してるひとが言いました。
「もう感情なんてない。
 好きとも思えない」

大きくなった少女は
「触る手」が近づいてくるのを
感じました。

自由になれたらどんなにいいでしょう。
空から舞い降りられたら。
ぐちゃぐちゃにつぶれられたら。

大きくなった少女は
まだ迷っています。

胸の中、土砂降りの夜。
でも、涙は出ない。
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