土砂降りの夜/風音
その少女は
「触る手」が大嫌いでした。
いつもいつも逃げ続け
大人になっても
怯えていました。
ある日
とても信頼しているひとが言いました。
「キミが自分を傷つけても
もしも死んでも
ボクの知ったことじゃない」
同じ日
別の愛してるひとが言いました。
「もう感情なんてない。
好きとも思えない」
大きくなった少女は
「触る手」が近づいてくるのを
感じました。
自由になれたらどんなにいいでしょう。
空から舞い降りられたら。
ぐちゃぐちゃにつぶれられたら。
大きくなった少女は
まだ迷っています。
胸の中、土砂降りの夜。
でも、涙は出ない。
戻る 編 削 Point(4)