『アクアリウムはエーテル日和』/川村 透
こんなエーテル日和にみんなが集まるなんて、
涼やかに横顔を見せて誰かが言う波止場
太陽は赤色102号から黄色4号へとギラつきを増すばかりで
埠頭を渡る風は塩辛く湿った毛布のように僕たちを抱き締めている。
切れ切れに遊園地の声がして、
「お祝いごとは水族館の中で執り行いマス」
ぎくしゃくと化粧の剥がれかけた蒼い男が告げるのだから、
僕たちは桟橋の雑踏を横切ってあそこまで行かなければならないんだ。
水族館は銀色の球体とガラスの三角錐の容器、ゼリーっぽい液体で満たされている
ようで大きくむくむくとそびえて、冷気をここまで運んでくるから迷いようもなく。
僕たちがあそこへ近付いて
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