シンキンコーソク/大覚アキラ
ロダンの“考える人”のような姿で
椅子に縛りつけられたオヤジが
苦悩の表情で沈思黙考している映像だった
+
母は
相変わらず軽やかな口調で
夜中に救急車呼んで、それはもう大変だったの
と言った
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救急車という単語を耳にして
ようやくぼくの頭の中で
シンキンコーソクという音が
心筋梗塞
という文字に変換された
+
お父さんったら、自分で119番に電話したのよ
と
笑うように言った母の声は
すこし震えているような気がした
+
電話を切った後も
ぼくの耳の奥には
シンキンコーソク
という母の声がこびりついていて
なかなか消えなかった
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