ユダは考え深かった。/生田 稔
 
ユダほどのアンビバレンツな透徹した理解や尊敬と憎しみの入り混じった感情は持ち合わせはなかった。
 ユダは銀三十枚ぐらいの僅かな金子に目がくらんだのではなかった。当時の宗教指導者たちと同じようにイエス・キリストに好感を持ってはいなかった。
 祭司たちは単に自分たちの地位が脅かされるぐらいの憎しみや嫉妬心ぐらいであったかも知れない。反面、イエスはわざわざユダを使徒として選び、金箱を預け、それを流用するのを見ぬ振りをし、ユダが出てゆくときには、ユダの運命を非常に悲しんでいる。「生まれざりし方良かりしものを」とまで言い添えている。
 思うに、聖書予言、それがイエス・キリストのとき成就したということを
[次のページ]
戻る   Point(3)