わたる ひびき/木立 悟
 




おりかけた踏切を越える数が
息つぎの数を超えてゆく
骨にそのまま吹くような
すずやかな朝


沈没船の数
鳥の数
波の数
星の数
誰かの何かになれる数


石に刻まれるほどに
よろこびを欲しながら
皆が皆 得られずに帰りゆく
その背も その音もまた
石に刻まれてゆく


雨が道に木を描き
雨のあいだかがやいている
枝がひとつ
滴をつまむ


帰る声が唱になり
水のまわりを巡っている
水底には過去があり
水面を髪のように覆う


逆光の羽 午後の淵
緑と
光の落とし主が出会い
互いの声を交換する


水たまり
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