七年/佐々木妖精
たとえば
履き潰し
捨てるつもりだったスニーカーを
いまだに車へ立てかけている
何度も体温を通わせた
足に馴染みきった身体を
物を
肉体を
引きずって
これは道具なんだと
気づいた
おでんは熱いから
指という道具では掴めない
指という道具で
菜箸を操る
指という道具で
エアタイピング
目という道具を
眼鏡という道具で矯正し
見つけた
中央で泣いてたのに
今は時々
片隅で笑っている
生きることが
素晴らしい
のではなく
軽快であることが
素晴らしいのだと
口を開け笑っている
その立ち方はまるで
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