外国人のミサイル/N哉
いる中国に駆け寄った一人の女を視界に入れてしまった。
中国は気絶していて、女が声をかけても目覚めない。女はとりあえず改札から中国を離す為、抱え起こそうとした。当然の事ながら、女ひとりの力では無理だ。おれはテレパシーを感じなかったが
「手伝いますよ」
無論、女の顔は確認済みだ。終電の音が聞こえる。女はおれの顔を見て露骨にガッカリした。とりあえず中国を通路の端に寄せ、救急車を呼ぶ。その到着を待っている間が勝負だったのに、目覚めた中国がこんなことを言ったせいで、それどころではなくなった。
「ここは中国だ」
女は中国を力一杯殴り、便乗しておれも中国を殴った。
六本木が騒がしくなり、女はおれから逃げ、おれは女を追うように逃げた。誰の国かも分からないような場所を、笑いながら。
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