心が行く/砂木
 

はやくから 難儀かけます
今年もはじまったんしなあ
まず無理しねで ゆっくりやってたんせ

一年過ぎるのは はやいなや
今年の林檎は なんとだっけな

手足は動かしつつ 近況が話題にされる
ざわざわと緑の葉と赤い林檎の間を
いくつもの笑顔がいきかった

会社もそうそう休めない
一時に集中してする収穫
すべて手作業の林檎もぎに
人手は ありがたい

祖父母が杉畑を開墾し 買いたし
少しづつ増やした畑だ
父と同じ年の木もある
父の兄弟を育て 私の兄弟を育て
今 甥も育て
でも 守っているのは家人だけではなく
守られているのは 家人だけでなく

また難儀かけます と挨拶をかわしていた
親戚の人も年とともに 変わり
二度と挨拶をかわせない所に旅立ったおじさんもいる
雨風の日は合羽を着て
共に 黙々と作業した

心が行く
青空の中 みんなで働いた林檎畑へ
ありがとう おじさん

元気に働いた秋の日々へ
私の一番 幸せな日々へ
そしてこれからの 幸せな日々へ
心が行く






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