「溺れる心音」/菊尾
 
なる
終われば鼻歌を掠れた声で唄う
胸に耳を押し当てられる
細い手首を握る
この瞬間を音と振動で確認する
満足そうに微笑むその顔
満たされれば朽ちていく
その先を悲観する僕の代わりに
外では一段と雨が泣く


信じなくていい
体温は嘘をつかない
きっと壊したがっているのは僕で
乾かない髪のまま
震える指先
思うように話せずに月日が残酷さを助長していく


裏切る僕を許さなくていい
そうすればきっと
生き続ける事ができるだろう
歪んだ僕は
君の暗がりの中だけで呼吸する
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