「半月の夜」/菊尾
 
迷いました
立ち込めました
自分を見失い
不穏な空気は濃密です
君がくれた記憶は夜毎一粒ずつ飲んでいて
そうやって体を沈めます

半月が揺れるコップの水面
奥歯で噛みしめる馴染まない日常のこと
浮き足立って跳ね上がって
掴んでぶら下がれれば
あの半月だって身近な存在
薄く笑う夢世の一時です

こうやってこのままを閉じ込めて
信じ込んだ幻想を永遠だって名付けたり
おかしいのは多分僕の方で
それをオモチャに遊ぶのが君

頼りなく感じる宵の口
乗り切るまであと数分の会話が愉快
形変わる前に色濃くなった半月
掴んでぶら下がったら僕の体も変化が始まる

こんばんは
こんばんは
奇遇な必然の君
今夜は何で愉しもう?
抵抗できないほどの
素敵な虚構を
今夜もきっと創るだろう

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