夢心地/木屋 亞万
白線に両手の親指と中指を添える
左足を後ろにずらし
少し腰を上げる
ほんの一瞬
眠ってしまったのだ
気が付いたら
始まっていた
訳もわからず走っていた
なぜ走るのか
どこからどうして
白線に来たのか
わからない
行き先も知らない
どこそこに向かえと
言われた訳ではない
振り返ってみても
草と砂しか見えない
視界が揺れているからでも
息が乱れているからでもない
ただ蹴り出すときに
浅く掘れた穴が
点々と交互に続くだけ
だからどうして
肝心なところで
私は眠ってしまったのか
考えているうちに
記憶に想像が混ざる
風景の土と草のように
境目など重要でない
かのように
平然と混ざりあっている
瞼がひそかに
降りてくる
眠い
走りながら
少し眠ろうか
眠った瞬間に
世界が新たに始まった
私はまたスタートラインから
最初の一歩を踏み出していた
私はついにどれが夢か
全くわからなくなってしまう
ただ
気が付いたら
走っている
無意識に
地面を
蹴り
飛ばしている
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