ひとりのシガリロ/伊葉幸緒
さみしいと言いながら携帯を切り
電源を落として外に出る
木を焦がすような珈琲の香りがしてる
あー冬の螢ね
止まらない、かもしれないショコラを噛み潰す
おじきゅういちまんえんの世界だ
冬の螢は珈琲の香り
一番仲のいい娘の前で、笑顔で火を揉み消してみせたよ
あー珈琲が残ってる
カフェクレーム
止まらない
カフェクレーム
濁らない
カフェクレーム
連れ込まれる
カフェクレーム
その真意を知ってるよ、と言いたげな男の眼を
焼き切るように見詰めた
カフェクレーム
噛む
カフェクレーム
落とす
カフェクレーム
揺らしていい
一晩中黙らない携帯を一瞥して
あー
螢だカフェクレーム
戻る 編 削 Point(0)