凍った月/いねむり猫
地吹雪が去った夜
夜空に張った薄氷の中に
満月が封じられている
月の光は
擦りガラスを透した霊安室の灯りのように
歪められ 動かない
風がどこかで身を潜めている雪原で
針のような星の光に縫い止められた 男の薄青い影は
悲しみに我を忘れた主人に別れを告げて
この夜の住人になる
闇に引かれて飛翔するフクロウが
今夜の獲物に太い鉤爪をめり込ませるころ
雪にしたたる数的の血で 月の光がゆるむ
この道の先には たしか大きな湖があったはず
影のない男は かすかにうなずき
小さな亡骸が一人残る小屋から逃れて
凍った月の中へ 分け入って行く
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