花と花/木立 悟
横を向く指
くちびるの指
そっと押し分け
舌に触れる指
いつまでもいつまでも散りながら
消え去ることのできないもの
奥の奥にある赤いまたたき
にじみつづける音のかたち
溶けてゆく雪が音になり
音のかたちのまま残る
指も羽もある
飴も唱もある
舌に触れても
舌は応えない
洞のなかには
光の輪がある
頬に触れる指は沈み
頬の頬になってゆく
ふくれてはふくれる
肌の楽譜
動くものに
輪はついてゆく
なぞる鉛 なぞる鉛
たくさんのたくさんの遠い舌
触れてよいか迷う指さき
そのひとつ分の大きさのもの
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