批評祭参加作品■現代詩の記号論2/葉leaf
 
る。世界の法則を破ることによっても、読者に詩的感興を与えることができる。
 本稿では、詩の「コードを破る側面」に主に注目してきた。だが最後に、特にコードを破らなくても十分美しい詩は書けるし、特にコードを破らない詩行も詩においてはたいへん重要であることを指摘しておく。それは、ストーリーや思想、認識、情景、感動などを分かりやすく直接示すことで、現代詩においてはむしろコードを破る表現よりも重要なくらいである。そのようなものの好例として、高見順の「葉脈」から引用する。

 僕は木の葉を写生してゐた
 僕は葉脈の美しさに感歎した
 僕はその美しさを描きたかつた

 苦心の作品は しかし
 その葉脈を末の末までこまかく描いた
 醜悪で不気味な葉であつた

 現代詩のもっと多くの側面について記号論的に分析したかったが、紙数が尽きてしまった。芸術の記号論的分析にもそれなりの価値があることを分かっていただければ幸いである。

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