批評祭参加作品■現代詩の記号論2/葉leaf
 
は第一次的に、文字の形や配置といった視覚性において読者に与えられる。そして、視覚性の段階でも詩は自律し完結しており、そのものとして読者の情緒に直接働きかけるのだ。
 次に音楽性について。ここで松浦寿輝の「ウサギのダンス」から次の箇所を引用する。

 トリウサギならばパタパタロンロン耳をふり ユルルンユルルンとのぼってゆく

「パタパタロンロン」は「耳をふ」る様子を意味する擬態語であり、「ユルルンユルルン」は「のぼってゆく」様子を意味する擬態語である。これらの語は、一応は記号内容を持つ記号なのである。だが、両方とも、既成のコードにはない擬態語であり、「新しい記号」として詩人が創造したもので
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