低い太陽(重機人間ユンボルより)/月見里司
逃げ出した谷底
には肌寒さがひしめいている
じれったい速度で燃える
一斗缶の中で時折弾ける火
の勢いで灰が舞う
いつかの完璧に高い空では
太陽がトンネルの奥を
照らし出す
ヘッドランプよりも
もっと明るい色で浮かんで
いる
たくさんの螺子が
外されて
ねじ込まれていた部分は
輝いていて
なめらかな放物線が
空間を
音もなくすり抜ける
逆光の煙突から
黒煙がたなびくのを
なつかしく思っている
スモッグの奥にある
濁った黄色
明け方の低い太陽
際限なく加速して
ゆくのを無理に抑えこんで
歩きつづけ
余分に溜まってゆく
熱で熔けてゆき
赤くあかるく
一本道に跡が残る
(エンジンのうなりが
かすかに聞こえている)
凶器に重さを
感じないことだけを
長く
覚えている
人々がいっせいに爪を立て
崩れろ
と
//2008年1月24日 「重機人間ユンボル/武井宏之」(集英社・ジャンプコミックス刊)より二次創作
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