穴を掘れ/カンチェルスキス
 
せつな過ぎて 街灯に浮かんで逃げる自分の影に泣けてくる
おれが移動すればおれの影も動く
泣いてても笑ってても 影の表情や温度は変わらん
光の帯となって過ぎ去ってゆく特急列車の通過
おれは野菜という言葉を思い浮かべる たぶんセロリとか
そしておれは歩道橋の上から飛び下りる
右足複雑骨折だけで危うく助かる男として 何もできない 何もやらない
錆びついた階段を上っていたら 思いついただけのこと 五万人の足に影響を及ぼした らしい けど (笑)さ タコだったら何万人の足だ やつらタコみたいなもんだろうと苦笑いもくるしくて そしておれは何も良くならない
毎朝 蒜山高原ヨーグルトを食べながら 羊たちの沈黙に耐え切れん
工事現場の音 日曜の早朝から聞こえてくる
ただどうであれ、穴を掘っていくのはいいことだ
ただ穴を掘れ 何もなくても



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