鉄と羽/木立 悟
肩は既にはばたいていた
鎖骨から胸へと流れる羽を
抱き寄せようとする腕もまた羽だった
耳も髪も眉も目じりも
風にそよぎはじめていた
咲きつづけるからだをひらき
子はひとり川辺に立ち
近づいてくる蒼を歌った
ずっと望んでいたとおりに
左目を失ったあとも
鉄の柱は川辺に立ち
右目に映る音を見ていた
流れ巡り すぎてゆく
蒼い歌を見つめていた
すべてに染まらず
すべてに染まる
透きとおる明るさの重なりに
光は子になり
子は鳥になり
幾つにも分かれはばたくものとなる
細く光る一筋の想いに
鉄は子を見つめていた
夜と雲の間の月から
降り来る色を見つめていた
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