かなしみ/soft_machine
 
しいと
飽きもせずいつまでも繰り返し
幾らでも置き去りにできるもの
何の為に
自分の為に
そんな風に思えばかなしいことは
実はそれほど哀しくないことかも知れない
叫ばずにはいられない怒りにくらべれば
駆け出してしまう喜びにくらべれば
日々の会話
一切れのパンよりも
哀しみは愛しさと同じくらい儚くて
まるで野良犬を襲うにわか雨のようだ
柱に刻まれた文字を伝う風の祈りのようだ

ことばで出来ることに限りなかったあの日
男の子がたったひとり公園に描いた絵
その隣で神さまは世界に数字をばら蒔いた
夕暮れになるとことばの影に休む神さまは
今の私からはなれて遠く
優しさと同じくらい
流れる涙にそれ以上の名前はいらない
きっと今夜も天井を眺める
祖母のしわくちゃだった皮膚が
伸びて薄っぺらくなっていた
するとかなしみは
こどもの笑顔のようになる
けれど、私は泣かない





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