一円の雪/小原あき
一円の雪が降った朝
十円のゴミを収集する車が
難しい顔をして通り過ぎる
百二十円のココアを
二千九百円の手袋で包み
三円分のリップクリームを塗った唇に持っていきながら
それを見つめていた
昨日、五千円のセックスを彼氏とした
互いに払い合うのだから
実際は無料(ただ)なんだけど
そういう仕組みなんだから仕方がない
百円の腕枕を三十分してもらった後
二百円分のマッサージをしてあげた
だから、昨日は百円分得をしたんだ
一円分の白い息を吐いた
夏なら息は透明だから
たまにずるをしたりできるけど
冬はどうしたって見つかってしまうから
慎重
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