空も飛べるはず/壺内モモ子
 
足におもりをつけて歩いていた

始めたばかりのころはつらかった
今まで近くにあったものが遠くに感じる
そんな怖さがあった
たくさんの人が行き交う駅のホームの階段で
足が持ち上がらなくて何度も何度もつまづいて転んだ
恥ずかしくて
自分のやっていることがばからしくて
おもりをはずそうとしたけれど
こんなところでおもりをはずすのは転ぶことよりも恥ずかしい
それにおもりを手に持って歩くほうが辛いはずだ

自分がやると決めたことだから
毎日、おもりをつけてひたすら歩いた

ある日、もう自分には必要ないと感じ
おもりをはずしたら
なんだか空を飛べるような気がした
今まで遠くにあったものが近くに感じる
だから自分はどこまでも行ける

今度は、鳥のような羽を手に入れるため
手におもりでもつけてみようか
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