マラソン/木屋 亞万
 
遠くに見える足の裏を追いかけている
背中の向こうに雲と空と白い息と
颯爽と抜き去った後の
少し未来にいる半透明な自分
胸の隙間が肺に押し込められていく
締め付けられて息が苦しい
向かい風が頬を打ち
鼓動が激しくそれに答える
足の裏は交互に視線を送ってよこす


 マラソンは終わらない
 巻末はゴールではない
 新たな始まりへの開放
 次の巻頭詩が呼んでいる
 紙が捲れる度に
 指先の汗が控えめに
 本に道しるべを残していく
 右側に集まっていく紙の
 裏が
 隣に座る
 白髪の老人に
 優しい視線を送っている
 のを
 私は知っている


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