くものいと/かとうゆか
その空には雲がかかっていた
君は君らしくありたいらしく
空は空らしく空っぽがいいといっていた
真綿のような白い大きな雲
を はしからつまみだそうとしたが
どこがはしかわからず
しばらくためらった君は
けっきょくは真ん中から
つまみ 紡ぎはじめ
……カラカラカラ
紡がれていく糸のようすはとても新鮮で
僕は夢中になった
君は
まひるの雲から純白の糸を紡ぎ
日に照って浮かぶ雲からピンクの糸を紡ぎ
闇にまぎれまいとする雲から紫の糸を紡いだ
そのうちに
君のてつだいをしたい
空を空っぽにするてつだいをしたい
と僕は
あの大雲の糸紡ぎなんて とほうもないこと
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