早いひと/恋月 ぴの
 
わたしのあげた小さな声を
今か今かと待ちかねていたかのように
彼はわたしの身体からそそくさと出て行った

愛し合う余韻に浸ることもなく
そして満ちはじめようとした潮の流れが
素っ気なく沖合へ退くかのように
わたしの身体は閉じていく

出会ったときから彼は早かった
でもそれは際どい欲情ゆえの早さだと思っていた
わたしの身体に男の人が酷く興奮してくれる
それは女にとって決して悪い話ではない

おやすみの挨拶をするでもなく
彼は寝息を立て深い眠りについている

はだけたブラウスの胸元とか
大胆に組み替えた腿に突き刺さる
男のひとの好奇な視線は
わたしが忘れられた女
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