死とか臨界とか循環とか/小原あき
発するだけ
水分から見たこちらも明快だ
流れるだけ、凍るだけ、蒸発するだけ
時折見せる雪は、霰は、雹は、霙は、雨は
水分の少しずつの落とし物だ
***
先程まで鳴いていたのは
雛鳥だったか
親鳥は形を変えてしまったに違いない
嘴に運ばれる明日は
そう長くは続かないかもしれない
だけど、嘆かないほうがいい
もし亡骸を手にしたら
その冷たさは何処かに形を変えて
暖かみを与えているはずだ
対等になった親子は
嘴の感触を互いに求め合うだろう
***
読みかけの本をめくり
困惑するほどに読書をしていない
続きの頁がわからずに
めくったり戻したりを繰り返している
だけど、本当はどの頁も
白紙ばかりで
これを書いたのはこちらではないのに
そちらの記憶も信用できなくなる
それは酷く寂しいけれど
きっとそれは当たり前のこと
そうして少しずつ
こちらとそちらが離れていく
***
外では雪が始まった
白紙みたいな空が
思案の続きを求めている
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