死とか臨界とか循環とか/小原あき
 
途中だった思案を開いてみる
また白紙になっていて
今日という日があるのはそのせいだ
記憶なんて信用できないもので
記録のほうがあてになるかもしれないと
毎日、一頁ずつ
日々を書き留めていても
翌日に白紙になることは
どうしようもないことだ
書き留めたものを読み返さずに
続きを書き留めて
手に残すことが
酸素を吸うことの次に愛しいことで
この手に感じた冷たさを
白紙の思案に書き留める


***


消えることはない
生まれるものもない
何処かから来て
何処かに行ってしまうだけだ
あるいは形を変えて
そこでそうして
急なことで困惑した顔を
眺めて
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